ガイド50とは

 「ガイド50」は規格を作成する人のための指針であり、子どもの安全に責任や関心のある様々な人びとにとって極めて有効な情報を含んでいる。「子どもは小さな大人ではない」とはどういう意味か、子どもの怪我がなぜ問題か、大人と何が違うのか、その理由は何か、どのような事例があるのか、防止する方法は何か、などが詳細に記述されている。

 「ガイド50」とは国際規格ISO/IEC Guide 50の略称である。この国際規格は1987年に第1版、2002年に第2版が発行され、子どもの傷がい事故の防止を考える上で非常に有効な文書として世界に広く普及しているが日本ではほとんど知られていなかった。

 2012年にISO/IECにおいてこの規格の再改訂の作業が開始されたのを機会に日本でもようやく関心が高まり、これに対応する国内委員会が設置された。私たち、子どもの安全研究グループはこの国内委員会の段階から参加し、独自の検討結果を基にして多数のコメントを提出した。改訂版の国際規格は、規格のタイトルも内容も大きく変更され、2014年12月15日に第3版として発行された。
これを日本語に翻訳してJIS規格にするためのJIS原案作成委員会が2014年から開かれ、子どもの安全研究グループはこの委員会にも参加した。2016年12月20日に永い審議を経てJIS Z 8050 「安全側面-規格及びその他の仕様書における子どもの安全の指針」が制定、発行された。

理解を深めるために

「ガイド50」は原文が英語とフランス語であり、文化的背景が異なることも含めて、用語や言い回し、文脈などに理解し難い部分があり、議論が絶えない。そうした中でわれわれのグループとして気になった用語や表現について「キーワード」として記録・解説し、順次WEBサイトに掲載していくことにした。多くの人々にとってこの「ガイド50」に親しみをもっていただけることを願いたい。

「ガイド50」の内容(目次から)

 「ガイド50」は2016年12月20日付けでJIS Z 8050:2016として制定された。その内容について目次を参照しながら概説する。

    タイトル

 Safety aspects – Guidelines for child safety in standarads and other specifiations
 「安全側面-規格及びその他の仕様書における子どもの安全の指針」

    Foreword

 ISO/IECにおけるこの規格の発行・改正の経緯と共に、今回の改正のポイントが書いてある。一つはタイトルと範囲について「ガイド51」との整合を図ること、二つにはこれが規格発行者のためのものであることを明確にしたこと。但しこのForewordは残念なことにJISでは省略されている。

    Introduction 序文

 ここではこの規格は誰のためのものか、その意義、目的、構成などと共に、子どもの傷害がなぜ問題なのか、その傷害の防止又は低減に対して規格がどのような役割を果たすのか、などが総括的に記述されている。良く知られた一般の機械安全に関連する基本安全規格「ガイド51」(JIS Z 8051:2015)に対して、この「ガイド50」が特に子どもの安全に関する追加情報を提供するという役割があることも明記されている(規格条項 0.5 参照、以下同じ)。

    1 Scope 適用範囲

 この規格は規格類を作成又は改正する専門家に対する指針である。この文書は子どもが使用又は関わりをもつことが想定される製品に対して適用され、子どもへの身体的危害の原因への対策を施すことを目的としている。但し、故意の危害(例えば虐待)、又は心理的危害(例えば脅迫)のような非肉体的危害の防止に関する指針は提供しない。

    2 Normative references 引用規格

 引用規格はない。
 ほとんどの国際規格には引用することによって、その規格の規定の一部を構成する規格を揚げてある。引用規格がないことはこの規格が最上位にある事を示しているとも受け止めることができる。

    3 Terms and definitions 用語及び定義

3章の用語

  3つの重要な用語が「ガイド50」特有の用語として定義されている。

 ・子ども(child):14歳未満の人
 ・ケアラー(carer):子どもの安全について一時的であれ、責任を果たす人
     例)両親、祖父母、限定的な責任を与えられた兄弟姉妹、その他の親戚、大人の知り合い、
       ベビーシッター、教師、保育士、ユースリーダー、スポーツコーチ、キャンプ生活の
       指導員、保育所就業員
 ・製品(product):製造物(その包装も含む)、プロセス、構造物、据付け、サービス、構築され
          た環境又はこれらのいずれかの組合せ

 その他に5つの用語、危害(harm)、ハザード(hazard)、リスク(risk)、安全(safety)、
許容可能なリスク
(tolerable risk)、は「ガイド51」と一致するものとして定義されている。

    4 General approach to child safety 子どもの安全への一般的アプローチ

 ・規格作成者は規格の対象となっている製品が子どもを直接の使用者として想定しているかどうかに関わり
  なく、子どもがなぜ、どのように関わりを持つかを考慮すべきことを詳細に述べている。特に大人を対象
  としている「ガイド51」における安全とは区別して考えるべきことにも触れている。

 ・子どもの年齢区分呼び方
  ”ベビー (babies) ” 又は ”乳児 (infants) ”:まだ歩行できないような子ども
  ”幼児 (toddlers) ”:歩行はできるが不十分で、また強い探索行動を示す子ども:
  ”低年齢の子ども(young children)”:よちよち歩きの段階は超えたが基本的能力はまだ発展途上にある
                   3~8歳の子ども:
  “高年齢の子ども(older children)”:まだ思春期には達していない9~12、13歳または14歳の子ども

 ・リスクアセスメント
   一般的なリスクアセスメントのアプローチについては「ガイド51」にあるが、子どものリスクに関し
   ては特別な注意(special attention)が必要である。

 ・危害の防止及び低減
   リスクアセスメントにおいて安全な製品を設計することの重視(第1次予防)、次いでハザードへの暴
   露の確率と危害の度合いの低減(第2次予防)、またこの規格の特徴として、子どもの怪我が発生した
   後、危害の長期的な作用を低減させる対策(第3次予防)も含まれる。

 ・視覚に入らない子ども(死角に入る危険性)

 ・障がいのある子どもへのニーズ

    5 Safety considerations: child development, behaviour, and
     unintentional harm
 子どもの発達、行動及び不慮の危害

 「子どもは体の小さな大人ではない」という文章に始まり、子どもが大人とどのように違うか、それによっ
 て子ども特有の怪我のリスクがどのように発生するのかを詳細に記述してある。
 ・子どもの身体の大きさ
 ・運動能力の発達、生理学的発達、認識力の発達
 ・探索行動
 ・発達に関する知識、危害防止への適用
 ・発達年齢と実際の年齢

    6 Safe environments for children 子どもの安全環境

  子どもの発達に加えて、子どもが置かれている物理的及び社会的環境が子どもの安全に大きな影響がある
  ことを述べている。
 

    7 Hazards relevant for children 子どもに関連するハザード

  7.1から7.15まで多くのページを割いて、ハザードの分類毎に、なぜ、どのように危険があるか、多数の
  事例を示し、有効な対策について記述してある。子どもの身の回りにあるハザード(危険源)について
  知りたい人には必読の章である。
 

    8 Adequacy of safeguards 保護方策の適格性

  保護方策とは、子どもの傷害の可能性を低減する意図で用いられるもので、製品に適用されるもの、据付
  け時に適用されるもの、人(子ども)に適用されるもの、更には(子どもの)行動によるもの、及び説明
  書によるものを含む。製品に適用されるものが一番効果が大きく優先度が高い。
 

    付属書A(参考) 評価チェックリスト

    付属書b(参考) 傷害データベース

    参考文献

 

「ガイド50」のタイトル(変更経緯)

  「ガイド50」のタイトルが今回の改正において変更された。それはほぼ同時期に改正された「ガイド51」に合わ
 せてこのガイド規格の目的を明確にすることと、両規格の整合性を示すことが狙いであると思われる。
 「ガイド51」と「ガイド50」のタイトルを比較してみる。

 「ガイド51」 ISO/IEC Guide 51:2014
       Safety aspects — Guidelines for their inclusion in standards

       JIS Z 8051:2015
        安全側面-規格への導入指針

   (翻訳規格であるJIS Z 8051 のタイトルはこのようになっているが、”their” は ”safety aspects”
   「安全側面」を指すと考えると、「(規格作成者が)規格に安全側面を導入するための指針」と解釈
   すべきではなかろうか。)

 「ガイド50」 ISO/IEC Guide 50:2014
       Safety aspects —
       Guidelines for child safety in standards and other specifications

       JIS Z 8050:2016
       安全側面-規格及びその他の仕様書における子どもの安全の指針

   (JIS のタイトルはこのようになっているが、ガイド51のタイトルと対比して考えると、
   「(規格作成者が)規格及びその他の仕様書に子どもの安全の側面を導入するための指針」
   と解釈するのが適当であろう。)

 「ガイド50」の第3版改訂に当たってタイトルが変更され、”in standards and other specifications” が追加された。「ガイド51」のタイトルでは “their inclusion” となっていて「規格に安全側面を導入するための」という意味が込められており、「ガイド51」が第一に規格作成者のためのものであることを明示している。「ガイド51」との対比によって、「ガイド50」も「(規格作成者が)規格に子どもの安全側面を導入するための指針」という形で理解するのが自然であろう。

 但し、「ガイド50」では序文0.1に、「この規格は規格作成者のための指針を提供するものであるが、さまざまな人たちにも有用となり得る重要な情報も提供する」と記述されていることは重要であり、多方面の人々をこのガイドの読者として想定している。「ガイド50」でも「ガイド51」でも、今回の改正に当たってはISOの COPOLCO(消費者政策委員会)が参画し、消費者視点での安全意識が重要であることを示している。

COPOLCOの詳細は http://www.iso.org/iso/copolco 参照

規格の意義・役割 0.4 Role of standards

 JIS Z 8050:2016には、序文Introductionに0.4 Role of standardsとして規格の役割について書かれ
ている。
 規格には下記のような機能があり、傷害の防止・低減に重要な役割を果たす。
 - 設計、製造管理及び試験のための技術的専門知識を引出す。
 - 重要安全要求事項を特定(specify)する。
 - 説明書、警告、イラストなどによって知らせる。

 「ガイド50」の初版(1987)1)ではそのIntroductionに“How far can standards reduce injuries to children?” という一文を挿入し、子どもの怪我を減らすための規格の重要な役割について詳しく述べている。「規格化の主な効用は、製品の設計段階に取られるあらゆる予防手段にある。設計・製造においては生産者を助け、また製品を選別する上で流通業者を助け、製品の購入を決定して使用したりメンテナンスやサービスを行ったりする上で消費者にとっても助けになる。」としている。続いて「規格だけでは子どもの怪我を減らすことは出来ないが、規格が子どものことを考えて作られていれば子どもの怪我を減らす上で重要な役割を果たすことが出来る。子どもが使ったり触ったりするかもしれない製品の規格を作成する場合は第一に子どもの安全を考慮にいれることが大事であり、そのような規格の作成に当たっては消費者の代表が参加すべきである。」としている。

 2004年3月、六本木ヒルズ森ビルの自動回転ドアで6歳の男の子が挟まれて亡くなるという事故が起きた。この事故には様々な原因が考えられるが、その第一は自動回転ドアの安全規格が日本にはなかったということが挙げられている2)。自動回転ドアは欧州からの輸入技術であり、欧州に安全規格は存在している。しかしながら事故が発生した自動回転ドアは、安全規格のない日本で新たに大型化のための設計・製作が行われ設置された。従ってメーカーもユーザーも自動回転ドアの危険について認識を持っていなかった。豪華さと大きさを求めて設計された自動回転ドアは、重量が大きく、複数の強力なモーター駆動になっており、回転の慣性が大きく、人の安全のためには必要でも、機械に大きな負荷のかかる急停止をさせることが難しくなっていた。欧州なみの安全規格があれば、回転部分の重量制限などにより、その危険に対処する方策が設計段階で盛り込まれ、設置、運用に関わる人たちも危険の認識を持つことが出来たと思われる。この事故の後「JIS A 4721 自動回転ドア-安全性」という規格が作られた。このような安全に関するJIS規格があれば自動回転ドアの設計者は規格を参照し、子どものことを考慮に入れてリスクを最小にする工夫をし、悲劇を回避できたのではないかと悔やまれる。

1)ISO/IEC Guide 50:1987
2)向殿政男監修、中嶋洋介著「安全とリスクのおはなし」日本規格協会

 

「ガイド50」初版 ISO/IEC Guide 50:1987

「ガイド50」の初版は30年前の1987年に発行された。これは有名な品質保証の規格ISO 9000sが発行されたのと同じ年である。80年代は “Japan as No.1” と日本のもの造りが世界のトップに躍り出たと囃されたころであるが、その頃欧米ではグローバル化の動きが見える中、国境を越えてものが行き来する上で「安全」と「品質」が大きな問題になって、Guide 50とISO 9000sが誕生した。こんなものが国際規格になるのかと、日本ではあまり関心が持たれていなかった。間もなくして1995年にWTOが発足すると国際規格は世界貿易において事実上強制力を発揮するようになる。日本は国際社会に通用する「安全造り」と「品質造り」の国際化においてグローバル化で大きな後れをとっていたと言える。

 ISO 9000sの方は産業界の一大事であり、日本も4年遅れの1991年に翻訳規格のJIS Z 9900sが制定されて世界の動きに一応対応した。一方Guide 50は同じ年に誕生しながら日本では顧みられることがほとんどなかった。「ガイド50」のJIS化という点で、子どもの安全に関する意識が欧米より30年遅れていたということになる。「ガイド50」は普通の規格ではなく「子どもの安全規格を作るための指針」という位置づけである。子どもの安全という問題は縦割り型の日本の社会では取扱いが難しかったのであろうか。

 この「ガイド50」は他のISO規格とは異なりISOの 消費者政策委員会COPOLCOからの発案で起草されたことにも注目したい。その本文中にも記載があるように、安全規格の作成においては消費者が重要な役割をもつことを理解しなければならない。安全という概念はメーカーや行政が作って与えるものではなく、作る側と使う側を含む社会全体が合意した上で決められるという点が重要である。

「ガイド50」初版の内容で注目すべき点について以下要訳する。【かっこ内は「子どもの安全研究グループ」による注釈である。】

   タイトル Child safety and standards – General guidelines

「子どもの安全と規格-一般的指針」
【子どもの安全を規格で守るという考え方がシンプルに出ている。一方で本文には規格作成者が考えなければならない事項は消費者にとっても有効な情報であることも述べてある。】

   0  Introduction 序文

   家庭で、遊び場で、学校で、子どもに対する事故accidentは傷害injuryの原因になり、障がいそして最悪死亡につながる。意図しないで有害なhazardous化学物質に曝されるとこれも子どもには危害harmや傷害injuryを与える。
【1987年の段階であり、accident、injury、harm、hazardなどの言葉が厳密な定義なく使われている。】
・傷害を減らすために
   傷害を減らすためには子どもの特徴(年齢、性、人間性、社会背景など)を考慮した上で、子どもが関わる「もの」および「環境」についても注意を払わなければならない。
・傷害を減らすための規格の役割
  “How far can standards reduce injuries to children?”
  「規格で子どもの傷害をどこまで減らすことが出来るか?」
【特別にこの行で始まるセクションを設けて規格の重要な役割について述べている。】

 安全の分野で規格化の主な影響力は「もの」を設計する段階に予防対策が取られることにある。規格は生産者にとって設計・製造を援け、流通業者にとって「もの」を選別するのを援け、購入者にとっては購入の決定を援け、さらに使用、維持、サービスの段階でも役に立つ。では規格で安全を全て達成できるか? 規格は安全にとって決定的な部分であるとしても、子どもが「もの」に関わってそれがどのように使われるかという視点も重要である。従って関連する規格を作成する委員会には消費者の代表が含まれていることが重要である。
【まだ安全の定義が明確でない時代であるが、「安全」には使用者も含めた社会で納得する必要があることを強調している。】

   0.1  The importance of design (設計の重要性)

 製品に関連した事故と傷害を減らすには、人間の関与を必要としない「組み込まれた」安全が最も効果的であることは明らかである。使用段階で安全のための装置は動作が必要のないように、製品の設計・製造の段階で組み込まれていることがベストである。ここで、ユーザー指向の人間工学原理が仕込まれた規格の役割が明らかになる。何らかの安全装置が必要なら、先ずそれは人の手を介さず自動的に動作するようなものであるべきである。

 次の順序として効果的なのは人のただ一回の動作だけが必要な警告又は装置である。使う度に人が安全のことを思い起す必要があるような方法は最も効果が薄い。
 家庭で水道栓によるやけどの例がある。システムを設置する前にサーモスタットを工場で安全な温度にセットしていれば安全である。次は家庭の管理人にサーモスタットの調整を要求することである。最悪はいつも熱水を入れる前に冷水を入れておけと指示することである。

【まだガイド51が発行される前であるが、リスク低減のための3つのステップに近い考え方であろう。】

   0.2 The role of education(教育の役割)

 全部ではないにせよ大部分の傷害は、小さな子どもたちが自分の周辺で探索行動を取ること、また彼らがその好奇心のゆえに遭遇するhazardについて知識がないことからくる。遊んでいる子どもたちを最も熱心に監督していたとしても偶発事故を防ぐことは出来ない。子どもは成長するにつれrisk(リスク)とdanger(危険)の概念を正しく理解するようになる。それが通常の成長の中で起こるeducation(教育)である。別の形のeducationは子どもに対してaccident(事故)とinjury(傷害)の防止を教えることである。

 educationの一番の目的は人の行動を変えることであるがそれは長期間の問題である。上記のような一回の動作を人に教えることは容易であるが、頻繁に繰返す必要のある場合は効果が薄い。事故/傷害の予防のためのeducationには限界があるが、その効果は長期的視点でわかってくる。このGuide 50ではeducationは規格の使用とその価値を含む。それはhazardとriskについての知識を増やす。その結果として、環境が変わり、規格を使用することが受入れられ且つ望ましいという意見のもとに人々が行動を変えることが望まれる。

 educationの役割は子どもの年齢と行動によって変わる。乳幼児には「教える」という言葉は通用しない。低年齢の子どもは学ぶことは出来てもその行動は予測できない。従って子どもたちは両親その他の大人たちによって守られなければならない。環境は安全な装置及び規格によって出来る限り安全なように作られているべきである。高年齢の子どもたち又は思春期の子どもたちは安全のeducationを理解し受入れるがしかし知識を応用することは出来ないかもしれない。

 educationのもう一つの重要なターゲットは公共の意見を作ることに責任のある人びとである。彼らはわれわれが生活する環境を創り上げ、安全に関する法規制を作り守らせる。その人たちとは、メディア、建築家、設計家、デザイナー、エンジニア及び政治家を含む。

 【安全のために規格が第一の役割を持つ一方でそれが正しく活かされるかどうかが重要であることを指摘している。】

   1 Scope (適用範囲)

 このガイドは、子どもが使う又は関係するかもしれないproductsのための国内もしくは国際規格を準備しようとする技術的機関に対して基本的な安全の原理を確立するものである。ここでproductsという用語は、いわゆる「製品」についてその認識できるあらゆる部分(材料、コンポーネント、装置、サブアッシー、又はシステム)にも用いられる。更に建築物のコンポーネントも含む。
Note: いくつかの規格は子どもの安全に関わらないように見えても、規格作成に当たって子どもの安全に直接・間接に影響するかもしれないことを考慮すべきである。

   2 Definition(定義)

safety
 最大の実用的な範囲で傷害のriskを低減するファクターの最適なバランスを達成する概念
Note: 小さな子どもたちはriskを十分認識できないことを理解すべきである。riskは一般的に社会が子どもたちの安全に関して容認するかどうかを考慮しなければならない。

safety equipment
 子どもを危険のあり得るものから離して傷害を予防するか傷害のriskを低減するように設計された装置

reasonably expected misuse (by children)
 もともと設計者・製造者が意図していないような、且つ様々な発達段階における子どもたちの活動に関連した製品の使い方
 【定義はかなり抽象的であり、より正確な定義と意味は「ガイド50」のその後の改訂で明確になる。「製品」についてはこの初版でDefinitionではなくScopeの中に詳細記載があるがこれも改訂第3版では新たに明確に定義された。】

   3 General(一般)

 製品は意図された目的で使うときには安全であるべきである。しかしよくあることだが、ユーザーのmisuseによる固有のriskがあることを知るべきである。特に子ども用のものでなくても子どもが近づく可能性のある製品は、意図された使用法にも最低限適合するようにして子どもへのdangerを減らすよう設計されるべきである。子ども用にと意図された製品の場合、意図され、また予想される条件のもとでhazardを最少にするよう設計される必要性は特に重要である。実際の規格を書く場合、その文言は法令順守を明確に示すものであるべきである。子どもは、設計者、製造者そして親たちがもともと考えていなかった使い方をする意外な能力を持っていることをいつも念頭に置いておくべきである。

 規格の主な目的が安全にあるならば、ある種の性質について最大又は最少の限界値を要求事項とする必要がある。つまり厳密に定義したサイズ、ある場合には構造規定などである。この場合、経済的な理由で最小限の性能を与えることがよくある。子どもの場合、こういうminimaでは不十分であることが多い。従って限界値とするレベルは出来る限り実用的な範囲でrisk要素を減らすようにするべきである。子どもへのhazardを生ずる部分を明らかにするためにriskデータが使われるべきである。

 このGuideにおいて、規格は安全を達成するための情報を提供する技術的な部位消費者庁である。規格は技術的なソリューションを提供するものであって、特に応用分野が幅広い国際的な背景においては倫理的な判断に関係するものではない。accidentの統計が治療方法の必要性を示すような場合は、コスト対利益、コスト対効果の条件を考慮しなければならない。しかしながらそれらは考慮しすぎてはいけない。

 加えて規格協会はちばしば安全法規制の技術的ベースを提供する。実際いくつかの国では安全規制を特定の又は一般的な規格に完全に頼ることがある。国の規制の一部を構成する安全を扱う要求事項は、規格の参照の原則(ISO/IEC Guide 15)を容易にするために、規格とは別に出版するべきである。子どもの安全は多くの政府にとって特別の関心事であり、子どもの安全に関する多数の法的要求事項が存在する。従って子どもの安全と法規制規格とは密接な関係にある。

 ある地域社会において経済的及び社会的な発展の程度により、安全規格と教育は別の枠組みで運営されることがある。しかしながら安全への配慮の中にある原則は同じであるべきである。

   4 Ergonomic considerations(人間工学的考慮事項)

 子どもの年齢層によって行動、応答パターン、認識レベルの発達および抽象化の能力への側面を考慮すべきである。
 更に、製品規格はその製品を使う子どもに関する人体計測のデータを考慮すべきである。それは年齢、性、体重、強さ、身体のサイズ(高さ、届く範囲など)を考慮し、その年齢の子ども又は他の子どもによるreasonably expected misuseを心にとめておくことである。

   5 Specific considerations(個別の考慮事項)

 規格を起草する場合は子どもにとってユニークな又は特にシビアなhazardについて考慮を払うべきである。子どもを苦しませる数多くの製品関連のaccidentsについて、以下のパラグラフで扱う他annex Aにも示されている。(詳細略)

5.1 Poisoning(中毒)
5.2 Flammability, thermal injuries(火傷、熱傷)
5.3 Ingestion and inhalation of foreign bodies(異物の飲込み、吸込み)
5.4 Mechanical hazards and construction features(機械的hazards及び構造的特徴)
5.5 Electrical safety(電気安全)
5.6 Radiation(放射)
5.7 Marking and labelling(表示およびラベル)
5.8 Packaging(包装)
5.9 Marketing(マーケティング)

   Annex A (付属書 A)

annexA

【この表は子どもの傷害を広く捉えるのに役立つが、改訂第3版では削除された。】

 

「ガイド51」について初版

  (準備中)