NHK香川の報道(善通寺市、木製遊具事故)と専門家によるリスクアセスメント

2017年4月の香川県善通寺市で木製遊具「うんてい」事故(幼児は治療の甲斐無く2018年2月に亡くなりました)はまだ記憶に新しいところですが、NHKが香川県内の全ての保育所と認定こども園に国の指針(下記資料)を知っているかどうかアンケート調査したところ、回答があった90施設のうち過半数にあたる46施設が国の指針について「全く知らない」または「聞いたことはあるが内容は知らない」と答え、特に⾸や頭の挟み込みを防ぐ項⽬については、58の施設が内容を知らなかったと報道されていました。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20181031/8030002417.html

番組内で山中龍宏医師が指摘されていましたが、国の指針は公園の施設管理者を読者としたものですから保育所の方々にはとても難解です。専門家が必要です。また遊具の点検は、例えば横浜市の点検マニュアルを見ても公園に設置された遊具に経年変化などによる不具合や劣化が生じていないか等チェックすることに主眼があり、「危害を引き起こす潜在的根源」を見つけることは点検業務に含まれていないようです。

筆者は、機械安全を専門としており、事故発生した遊具の同型機を見分する機会がありました。善通寺市の遊具事故は、遊具の製作図(書籍の数ページにあって、設計書とはいえない)がV字構造による挟まれの可能性になんら言及されていないこと、また製作図を参考に木製遊具を製作した企業が製作図と異なった組立方法を採用したこと、が事故と関連しているのではないかと考えられます。

子ども達が触れる遊具等を「リスクアセスメント」に経験のある専門家がきちんと評価することが事故の予防には必要不可欠であり、その実施が強く望まれます。

参考資料:

1)  国の指針:都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第2版)、平成26年6月、国 土 交 通 省

http://www.mlit.go.jp/report/press/city10_hh_000168.html

2) その解説はネットでは:http://kenmane.kensetsu-plaza.com/bookpdf/186/ai_04.pdf

3) 遊具の点検マニュアル(横浜市)

http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/park/yuugu/pdf/manual.pdf

4) リスクアセスメントに関する国際規格:ISO 12100:2010 (JIS B9700:2013)

文責 森山哲